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09.15
Sun



新しいiPhone発表の記事は、僕を驚かせたあと、失望にも似た言いようのない気持ちにさせてくれた。iPhone 5sと共にiPhone 5cなるものがそこにあったからだ。プラスティック製と伝えられるiPhone 5cは豊富なカラーバリエーションと専用カバーケースとの数十通りもの組み合わせが売りだという。
しかし、プラスティックの鈍い光沢は明らかに"c"heapに感じられたし、専用と謳われるカバーケースは本体背面の"iPhone"の文字を中途半端に隠す、到底専用とは思えないような造形だ。

記事は、iPhone 5cは廉価版iPhoneであり、シェア拡大のための新興国向けモデルだという。
ちょっと待ってくれ。何だって?シェア拡大?!

ロイターによれば、新型iPhone発表後、株価は5%も下落したという。「投資家は、価格が新たな市場を取り込めるほど十分低水準でなかったことに失望している」そうだ。

でも、本当にそうだろうか?
僕を言いようのない気持ちにさせた何かは、もっと深い、根源的ところにあるんじゃないか?

1984年、Appleはリドリー・スコットを監督に起用し、伝説的なCMを制作している。CMではジョージ・オーウェルの『1984』をモチーフにした世界が描かれ、巨大なスクリーンに投影されている独裁者に一人の女性がハンマーを投げつけ、独裁者の支配に終止符を打つ。この独裁者は当時支配的地位にあったIBMを表しているといわれている。

AppleのこのCMが、全体主義へのアンチテーゼであることに異論はないだろう。でなければ、わざわざ『1984』を引き合いにだす必要もない。


今回紹介するスピーチはTEDの中でも人気の高いサイモン・シネックのスピーチだ。
スピーチの中でシネックは、マーチン・ルーサー・キングやライト兄弟とともにAppleを取り上げ、彼らが人の心を動かす方法に一つの規則性を発見し、これをゴールデン・サークルと名付けた。
その肝要とは、「人は『what』ではなく『why』に動かされる」ということだ。
シネックはスピーチの中で何度もこの言葉を繰り返す。
そして、自分が提供する物を必要とする人とビジネスをするのではなく、自分が信じることを信じてくれる人とビジネスすることを目標とせよと提言する。

シネックは、ジェフリー・ムーアのいう『キャズム』を超え、いわゆるアーリー・マジョリティーへ製品・サービスを届けるためには、イノベーターやアーリー・アダプターの存在が必要不可欠だという。そして、イノベーターやアーリー・アダプターを動かす鍵が『why』だと説く。『why』から始めることにより、彼らを行動に促すことができるという。

さて、今回のiPhone 5cに『why』はあるか。シェアの拡大は『why』になり得るだろうか。

驚かれるかもしれないが、Appleには明確なミッション・ステートメントは存在しない。にも関わらず、Appleが常に革新的であり続けられたのは、Appleの製品・サービス自体がその革新性を体現し、市場や社員に伝えてきたからである。

初代iMacの衝撃を覚えている人も多いだろう。カラフルなスケルトン・ボディーは一世を風靡し、Appleに限らず、身の回りの製品が次々とスケルトン・ボディーを採用していった。
そして、同時期にAppleで使われていたキャッチ・コピーが『Think different』である。Appleの姿勢を見事に表し、現在もAppleユーザーの心に留まり続ける秀逸なスローガンである。

シェアの拡大と『different』の両立には難しい舵取りが要求されるだろう。しかし、たとえ難しくあろうともそれが『how』や『what』によって行われる理由にはなり得ない。
シネックがあれほど繰り返した言葉を僕らはたやすく忘れてしまう。

" People don't buy what you do; they buy why you do it. "



WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違うWHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う
(2012/01/25)
サイモン・シネック

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